□番外編:ロイヤル・アスコット見てある記
去る6月21日に、由緒正しき英国競馬の祭典「Royal Ascot」に行ってきました。
そもそもやんごとなき貴族たちの社交場だった(である)こともあり、着飾っていく人が多いので有名です。ちょっと日本の競馬とは趣を異にします。
サムネイル(小さい画像)をクリックすると、画像を別窓で拡大表示します。といってもろくな写真はありません。
■なれそめ
金曜の夜に行った知り合いのレストランに行ったら、偶然、会社用に買ったチケットが余っているといってある方が匿名でチケットをくれたのです! 感謝感謝。
なのですが、アスコットというと競馬というよりはファッションで有名。特に、女性は派手で奇抜な帽子をかぶって周囲の注目を集めたり、新聞ではピーコのファッションチェックみたいな企画もあったりしてお祭り騒ぎです。今回は、コーンアイス(たぶん横幅1メートルくらい)を乗っけたような帽子とかが載ってましたが。多いのは、鳥の羽みたいなのを挿してる人。
当然、私はそんな余所行きなど持ってませんし、帽子もありません。
アスコットは3つの会場に分かれてまして、来てる人もドレスコードも分かれています。
1 ロイヤル・エンクロージャー
ゴール前とパドックに入れる。チケットは一番高い。男性は燕尾服にシルクハット、女性はサマードレスにショールに帽子という格好で、胸に誇らしげにネームプレートをつけています。
燕尾服はさすが背の高い英国人には似合います。日本人が着たら七五三だもんね。
2 グランドスタンド・エンクロージャー
ゴール手前の直線コースとパドック。
「スマートな服装ならOK」ということだったのですが、何をもって「スマート」とするのかが不明…
3 シルバーリング・エンクロージャー
そのほか。ドレスコードなし。競馬ファン用。コースからは遠いが大スクリーン(?)があるのでよく見える(らしい)。でもスクリーンで見るんなら部屋でBBCテレビを見てもいいのでは?
私がもらったチケットは2のグランドスタンドでした。週末にまでスーツを着たくない私は(って言っても平素もそんなに着てるわけではない)、チャレンジ精神を出してジーンズで臨んだのです。ただ、1箇所だけ「ジーンズはだめ」と書いてあるところがあって悩んだのですが…まあ、追い返されたらそれも話の種になるだろうと思ったのです。グランドスタンドのボックス席に入るには、真ん中の小さいプレートを見せるみたいです。
■往路
場所はロンドンのウォータールー駅から電車で南西に1時間くらいのところで、Ascot駅はもうサマードレス(スリップの生地が少し厚くなった程度…)にぴらぴらした羽をいっぱいつけた帽子の女性たちでいっぱい。私はどう考えても浮いてます。
車内では、普段は着慣れないのであろうスーツにドレスをまとった若めの男女がすでに酒盛り状態…こぎれいなかっこでswearing
words連発でした。しかし、まあ馬を見に行くのは二の次だとしても、着くまでにワイン3本も空けてちゃ向こうに行ってどうすんの。
駅に着くと、車内からは「イエー!」という歓声が上がりました。くたびれていつしか寝てたみたいで、起こしてもらえてよかった…
駅には急ごしらえの歩道橋がかけてあったのですが、これがほんと、工事現場かと思うような木製の不安定な橋でして、それがみっしり混みあってるのです。「これが落ちたらニュースになるな…わたしも載るな」とつい考えてしまったほど。
駅を出て入り口までは歩いて10分くらい。途中右には駐車場になっている芝生があり、そこではすでに酒盛りが。10時半から開場なのですが、実際レースは2時半からで、それまで飲んでたんですな。
地下道のようなところを通ってグランドスタンドの入り口にたどり着くまで、さすがにまわりがスーツにドレスだらけなので不安になってきました。もちろん、追い返されないほうがいいに決まっていますから。
入り口。もぎりのおじいさんたちも、びしっとスーツです。この暑いのに…
私はなんとかドレスコードを監視しているような人に当たらないようにときょろきょろしてたんですが、結局それらしき人は見つからず、すんなり入れてしまいました。大体、窓口では手元しか見えないので、わたしがジーンズをはいているのが見えるはずはありません。あの心配はなんだったのという感じ…。
たぶん、アスコットは着飾っていかなければならない場所、ではなく「いつもはヨレヨレでビールばっか飲んでっから、この日くらいはスーツにドレス着てみようじゃねーか」という場所なんじゃないかな、と思いました。
というわけで、晴れてアスコット競馬場に入場できました。
■いざ競馬場
わたしのチケットはボックス席にも入れるものだったのですが、そこに入ってしまうと好意でただで配ったのがバレバレになってしまうかもしれないので、コースのかぶりつきの芝生で見ることにしました。
会場に入るなり、空が広いなーと思いました。もちろん写真のとおり満席です。手前に見えるのはbookmaker、予想屋さんです。こっちで買うほうが普通の馬券売り場で買うより若干高い、らしい…というのは、わたしは馬券を買わなかったからです!!! いや、特に理由はなかったのですが、結構行き着いただけでへろへろでして、買った本でデータを調べる余裕もなかったのです。会場とパドックの往復もつらかったし。体力のなさがバレバレです。
■第1レース開始
着いた直後に始まったのがThe Hardwicke Stakes(G2、芝2000)でした。さすがにコースにかぶりつく人も多く、後ろから慌ててシャッターを切りましたが撮れたのはご覧の通り人々だけでした…嗚呼。動く被写体を撮るのに慣れてないんです。
こっちの盛り上がりはやっぱり日本とは違いますね。日本では、ファンファーレが鳴ると地鳴りのように「うををををを〜〜〜〜〜!!!!」と野太く盛り上がるのに対して、こっちでは始まると同時にやっと「イエーイ!」と叫びだす感じ。それまではわりとデータも見ずに友達と酒のんでしゃべってます。当然、赤ペンを耳に挟んでる人もいません…。ワンカップ大関もありませんし。
とはいえ、レースが始まるとそれなりに「おお、1番1番!」「カモーン!!!」と鋭い声援が起こります。どうせこの人たちはそんなに賭けてないし、儲けようとも思ってないんでしょう。当たれば酒のさかなになるくらいにしか思ってないのでしょうけど。
それから面白いなと思ったのは、日本だと精巧な電光掲示板やスクリーンでレースの情報(ほかの競馬場のも含め)を流しますよね。確かに大スクリーンはあって、パドックの様子などを流してはいるのですが、掲示板がなんとプラカードのようなものに手書き…それを、手でガラガラと揚げるのです(写真参照)
なんか手作りの競馬場って感じがしました。
第2レースまでは大体45分くらいで、その間人々はボックス席か芝生の上で敷物を敷いてだらだらくちゃべったり飲んだりしております。日本のように、チケットをビリビリに破って風に飛ばしたりという人は見かけませんでした(他に行った人は見たそうですが)。パドックへ詰め掛ける人もあまり。じゃあ一体何してたんでしょうか…。
■第2レース
さっきのレースで全然馬を見れなかったので、今度は早くからかぶりつきにスタンバイしようと思い、パドックにも行かずに場所取りをしました。途中で隣に来たおじちゃんは、わりと日本の競馬士に近い感じ…競馬新聞を手に、データをいろいろ見ております。赤ペンがないのが惜しい。ちろちろとわたしの方を見てるのですが、わたしはもうくたびれてましたのであえて知らん振りしておりました。
競馬場ってなんで、教えたがリが多いのかなあ…私のまわりだけかなあ。あまりに素人っぽい顔をしてるから。
第2レースは…なんだったっけ(笑) Highestなる馬が圧倒的人気というのがオッズから読み取れます。スクリーンもその馬しか映していません。私は競馬に関しては手堅い人で、儲けなくても損しないというポリシーの持ち主なので、買うとしたらこの馬に賭けたでしょう。結局買いませんでしたが。
で、撮れたのがこの写真…
なんなの! ああーん。と、遠すぎました。
そして1番人気の馬も負けていました。とほほ。
■第3レース
メインレースのThe Golden Jubilee Stakes(G1, 芝1200)です。賞金も桁違いに高い。
Golden Jubilee(女王在位50周年記念)というのですから女王の馬が走るのかなと思いきや、どこにも見当たらず…でも、俄然会場は盛り上がってきました。
「G1くらいはいい写真を撮る!」と勢い込んだ私。ズームばっちりで臨みます。
スタンバイしていた場所は、スタートからぐるっと半円形に回って、直線でゴールになだれ込むところでした。なので、回ってくるところはよく見えません。でも確実に熱狂が移動してくるので分かるのです。馬が来てるというのが。
よし、絶対撮る!(見てないので本末転倒)とカメラを構えたところ…
なんと、スイッチが切れました! そう、うちのFuji Fine Pix50iは、撮影モードのままほおっておくと勝手にスイッチが切れるようになっているのです…
おお焦りして、スイッチ入れなおしズームも設定しなおして慌てて撮ったのがこれ…。今度は寄りすぎ!!!
また失敗(号泣)
つくづく写真もダメです私。
でも疾走感みたいなものは出てませんか? 出てませんね…。
これで私は完全にへばりました。
なんせ朝からハンバーガーひとつしか食べておりません。このあたりから風が凪いで、本当に暑くなってきまして。暑いのがだめな私はよれよれです。
ドレスや帽子の客を遠目に見つつ、コース脇のフェンスにもたれてしばらくぼーっとしておりました。
ですが、まだパドックに行っておりません。馬をじいっと見ないでなんの競馬場か!ということで、ようやく立ち上がりました。早くしないと次のレースに出場する馬がパドックを出てゲートインしてしまいますから。
■パドックへ
さて、パドックへの行きかたを探していると、酒や食べ物を売っている屋台がたくさん目に入りました。
やはりここまで来たのですから酒を飲まずになんのアスコットでしょうか(?)
というわけで、いつものバカルディを頼みました。
「…3ポンド80!?!?」(日本円で約700円)
こういうイベントではぼるものだとは知っていましたが…
記念と思い、泣く泣く金を払って飲みました。…うまかったです(笑)
他の人によると、出張ATMでは引き出すごとに2ポンドとられたそうです。ええ商売だのう。
酒を買って「…うまい!もう一杯!」と思ったところでパドックへの地下道入り口を見つけました。ところが。
「この先飲食物持込お断り」とあるじゃないですか。
あのう、さっきバカルディ買ったばかりでまだ飲みきってないんですが…しかし、ぐずぐずしてると馬がいなくなってしまう!
仕方なく、3ポンド80もしたバカルディを一気飲みするはめに。食べてませんから酔いも回って当然なわけで、さらにへろへろになりました。でも気分はよかったです。
パドックもずいぶんな人だかりでした。騎手の知り合いもいるらしく、「勝てよ!」という声援も飛んでます。
私は競馬シロートですが、馬っていいなあと思うのは、ちゃんと自分の使命を分かってるとこなんです。ゴールまで走りぬくことが使命だ、それも1番になることが。ということが分かっているんです。最初に競馬を教えてくれた人がそういう教え方をしてくれたせいか、いまだにそういう見方をしてしまいます。余談ですが、騎手が落馬しても馬はゴールまで走ったりします(騎手が乗ってない分軽くなるので、1着になったりもするらしい)。もちろんそれは失格なのですけど、かわいいなあと思います。
パドックではもうすでに戦闘モードに入っている馬もあり、引っ張ってくれる人が気になって仕方ない馬もありで、身近に見られて楽しかったです。でも、そこで見た情報を馬券に生かす能力は私にはないのですけど…。ちなみに通常の馬券売り場はこんな感じです。買ってみればよかったかなあ…。
ということで、シロートのロイヤル・アスコットはなかなか驚きでいっぱいでした。
しかし、競馬場はやっぱり相当の馬好き以外はひとりで来るところじゃないかも(汗)
(おわり)