□初冬 (作:猫子さん)
私はその日、いつものように買い物をして帰った。
いつもの公園で夕日を見るのも、私の日課。
その公園は小さいけれど、高台にあるので目の前一杯に、夕日がひろがる。
私のちいさな楽しみ。
だけど今日は先客がいた。
ブランコに腰掛け、煙草を吹かしているのは義人さんだった。
義人さんは氷室先生のお友達で、ジャズバーのマスターさん。
いつでも楽しい会話で人を惹きつける人。
「義人さん!」
「やぁ・・・君か。」
義人さんはお店にいるときとは違って。
ざっくりとした黒いタートルのセーターと、かなりはきこんだジーンズだった。
足がながーい!
「今日はおつかい?」
私は自分の下げているスーパーの袋が、とたんに恥ずかしくなった。
やだな、かっこわるい。
照れくささも手伝って、私の口はぺらぺらと喋りだした。
「はいあの、弟が好きなのでロールキャベツです。今日はキャベツが安くて。あの。」
「・・・。」
義人さんは薄く微笑んだままだった。
「なんかいいね。」
「はい?」
「そういうのいいね。」
そう言ったきり、義人さんは夕日を眺めた。
私達を包むように、大きな大きな夕日がせまっていた。
義人さんも私もまっかに染まった。
「夕日の色って重たいよね。」
「はい。」
「全部オレンジに染まって、輪郭がぼやけて暗い闇を隠してる。」
「・・・。」
「あの夕日の向うには、何にも無い別の場所があるのかな。」
私はそう言う義人さんが、どこでもない所へ行ってしまいそうで、彼の袖をぎゅっと掴んだ。
「・・・どうしたの?」
義人さんの瞳は、夕日を受けていつもとは違う色だった。
私はなんにも言えなくて、ただ彼の袖をしっかり捕まえたままだった。
「ごめん、なんだか気障だね・・・。」
義人さんは眉をよせて照れたように笑った。
私はただ首をふった。
義人さんは、また薄く笑うとそっと私の手を包んだ。
「あっごめんなさい!」
私は力の入った指を戻そうとしたけど、義人さんは離してくれなかった。
「あの・・・。」
「ん?」
「て、手を・・・。」
「うん。」
「あのぅ・・・。」
義人さんがじっと見つめるので、私は顔を上げていられなかった。
そっと私の手をはなすと、義人さんが言った。
「寒いから帰ろうか・・・。」
「はい。」
義人さんの大きな手が、私の肩を抱いた。
私はびっくりして義人さんを見上げた。
「ああ、失礼。癖でね。」
女の子の肩を抱くのが癖なのかな。
とても自然な仕方だったけど。
私は、そんな事を考えながら義人さんに送ってもらった。
□感謝の辞
祭り「カフェ・シルバータクト」で共催させていただいていた、猫子さんからご好意で一番私が気に入ったSSをいただきました。
義人への愛が伝わりますよね、もうこれ以上ないほどしっかりと!
「そういうのいいね」って微笑みがなんか切なくて痛々しくて…いつもの茶目っ気たっぷりの義人とは全然違うから、目が離せなくて、なんかこっちが泣きたくなってしまう…
そう、そういうギャップに女って弱くないですか?
義人だってこんな瞬間あるよね…
かと思うと、やっぱり「癖で」女の子の肩抱いちゃうんだけど(笑)
義人ってやっぱりどこかイタリアンなセンスがあるのかな。愛車?はベスパだし。
猫子さん、ごっつうありがとう!!!!